私「アインシュタインと聞くと量子力学が思い浮かびますよ。今の今まで原子の解明に一役買ってきた量子力学ですが、もう下火というかなんというか。」御大「ま、今科研費の季節だけど、そのほとんどが化学系だったりするからね。なかなか物理でおまんまが食えない時代だったりするんだ。」私「しかし、マクスウェルによって携帯電話が使えるわけです。マクスウェル方程式から150年たってからでありますが。」御大「そうそう、量子力学ができて100年ってわけだ。でやっとその原子や宇宙の解明ができた。次はそれこそものづくりだね。これがくせもんだよ。なんといってもボーアの相対論の美しい数学がない。工学ってのは数学の伝統にも立っているわけだ。これがないとまず無理だね。そういや君は量子力学をやるって?」私「そうです。立ち位置、居場所がなくて困っています。」
御大「ま、それは仕方ないよ。大きなパラダイムシフトに立っているからね。年収350万円で生きていたりできるのは貨幣経済が終わったと思うよ。そんな時代ですらパソコンはみんな持っているし、安倍さんとオバマさんが言った寿司屋も10万円もしないというじゃないか。うまいもんも少し買うものを我慢すれば食える時代。貨幣経済が終わるか否かのパラダイムシフトなわけだ。で、科学だってそう。原子崩壊なんてもう質量保存の法則が成り立たないのと同様に、量子力学が工学に応用されるのも何かが崩壊しないといけないんじゃないのかな?というよりもう崩壊しちゃって、量子力学エンジニアなんてものに伝統がないのが今の状態かもね。」
ー貨幣経済が終わる?
「難しく考える必要はないよ。君だって損得勘定で生きてないだろ?損しかしないのに動いてしまう。その時点で貨幣経済が終わっているんだよ。ま、ミクロな話ではあるけど。この辺のことを勉強したかったら行動経済学でも読めばいいんじゃないのかな?」
ーそんなことより居場所ですよ!居場所がないから常に孤独なんです!
「みんながそうじゃないのかな。今の人たちは点でしか存在しないようにしか見えて仕方がないけど。なんていうのかな?自分の意志でしか生きられないというか、そんな感じ。昔は不二一体という考えがあったわけだ。たとえばむかしのCMは家庭がターゲットだった。だけど今なんて個人だろ。なんでも自分が背負わないといけない。これはすごく過酷な世の中だよ。不二一体ってのは一時流行した江戸しぐさってやつだ。」
ーその江戸しぐさは苦労して培ってない文化だからすぐ滅びて、点でしか生きてないと?
「そう。ルームシェアってあるだろ?あれって若者の点から線あるいは面で生きていくという表れでしかないと思うんだ。つまりこれも江戸しぐさってわけだ。水面下でよりよく生きようとしているよね。点が線になって面にでもなれば君はだいぶと楽に生きていけると思うんだ。ある高名な指針化の臨床医が総合失調症が治る瞬間ってのは『自分がどこにいるかがわかる時だ』っていうようなことを言っていた。それは具体的な場所じゃなくて精神の居場所なの。いろんな意味での。過去から未来のどこにいるのか。どういうものから生まれて、どこに向かっているか。つまりは曼茶羅のどこに自分はいるのかっていうこと。それを知ることなの。」